「古着ブームは終わった」という声を聞きますが、終わっていません。2025年の古着市場は約6,230億円まで拡大し、むしろ右肩上がりで成長しています。
ただし、首都圏では「閉店ラッシュ」と言われる現象も同時に起きています。古着屋の激戦区・下北沢では200店舗超まで膨張した古着屋が調整局面に入り、目抜き通りの大型店が閉業する異変も報じられました。
この矛盾した状況の正体、そして本当に大事なのは「ブーム論争そのものではない」という視点を、古着屋オーナーの立場からお伝えします。
- 古着ブームは終わっていない。2025年の市場規模は約6,230億円と拡大中
- ただし下北沢では200店舗超まで膨張し、目抜き通りの大型店が閉業するなど「閉店ラッシュ」が現実に起きている
- 原因は家賃高騰・円安・SHEIN等の低価格勢との競合・供給過多の4つ
- 重要なのは「ブームが続くか終わるか」ではなく「自分が何を求めるか」
- 流行で買った人はフェードアウトし、本当に好きな人だけが残っていく
古着ブームは「終わった」のか?結論から答える


古着ブームは終わっていません。ただし、その姿は明らかに変わりました。この章では数字と現場感覚の両面から、いま起きていることを整理します。
- ブームは終わっていない。ただし「形」は変わった
- 2024〜2025年の市場データ|むしろ右肩上がり
- それでも「閉店ラッシュ」が同時に起きている矛盾
それぞれ見ていきます。
ブームは終わっていない。ただし「形」は変わった
メディア露出は確かに減りました。テレビや雑誌が「古着特集」を組む頻度は、2020年前後のピークと比べると明らかに少ない印象です。だから「もう終わったのかな」と感じるのは自然な感覚だと思います。
でも数字を見ると違う景色が見えてきます。2024年の古着市場は約5,830億円、2025年は約6,230億円まで拡大する見込み。熱狂が落ち着いた代わりに、生活に溶け込んだというのが現在地です。
2024〜2025年の市場データ|むしろ右肩上がり
繊研新聞の調査によれば、日本の古着市場規模は以下のように推移しています。
| 年 | 市場規模 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2023年 | 約5,410億円 | ー |
| 2024年 | 約5,830億円 | +約7.8% |
| 2025年(予測) | 約6,230億円 | +約6.9% |
SNSでは古着コーディネートが毎日投稿され、ユニクロなど大手ブランドの古着プロジェクトも継続中。市場全体として見れば、古着は確実に生活の一部になりつつあるのがわかります。
それでも「閉店ラッシュ」が同時に起きている矛盾
市場が伸びているのに、SNSや業界紙では「あの店が閉店した」「古着屋が減っている」という声も目にします。これは矛盾なのでしょうか。
答えは「矛盾ではない」。市場全体は拡大しているけれど、店舗レベルでは淘汰が進んでいるのです。
古着屋の激戦区・下北沢で起きている「閉店ラッシュ」の実態


「閉店ラッシュ」の象徴として語られるのが、古着屋の激戦区・下北沢です。繊研新聞の報道をもとに、いま何が起きているのかを整理します。
- 下北沢の古着屋は200店舗超|2022年比3割増の急増
- 目抜き通りの大型店が次々と閉業
- 「調整局面」に入った下北沢の古着屋シーン
それぞれ見ていきましょう。
下北沢の古着屋は200店舗超|2022年比3割増の急増
下北沢はここ数年、古着屋が急増していました。繊研新聞によれば、コロナ禍以降に古着屋の数は200店舗を超え、2022年比で約3割増にまで膨張しています。
コロナ禍で一時的に商業地の家賃が下がったタイミングで、小規模な古着屋が一斉に出店したのが背景です。一時期は「古着屋が毎週のようにオープンしている」と言われるほど。下北沢に行けば、狭い路地の奥まで古着屋が並ぶ光景が日常になっていました。
目抜き通りの大型店が次々と閉業
ところが2025年に入って、風向きが変わりました。繊研新聞は2025年9月の記事で、下北沢の目抜き通りにあった大型古着店が閉業するなど異変が生じていると報じています。
200店舗超まで膨張した結果、客の争奪戦が激化。売上が伸びず、家賃をまかなえない事業者が増えているのです。特に厳しいのが、2022〜23年ごろに出店した小規模事業者。家賃が上昇する局面で参入した店ほど、固定費の重さに耐えられなくなっている。
「調整局面」に入った下北沢の古着屋シーン
繊研新聞はこの状況を「調整局面」と表現しています。膨張しすぎた市場が、正常な供給量に戻るための調整が始まったという見方です。
業界内では「今後も閉店は増える」との見方が強まっています。コロナ禍の特殊な環境で生まれた古着屋ブームが、家賃・為替・競合という現実の前で再編されている。それがいま下北沢で起きていることの正体。
出典:下北沢 あふれる古着屋、調整局面へ 家賃高騰と売上不振で厳しく|繊研新聞(2025年9月2日)



首都圏の友人からは「家賃が上がって厳しい」「円安で仕入れが重い」という声を聞きます。ただ、新潟では最近、閉店の話をほとんど聞いていない。むしろ毎年新しい古着屋ができている印象で、古着イベントが開催されるほど盛り上がっています。数年後、同じ波が新潟にも来るかもしれない。個人的にはそう思って、危機感を持ちながら試行錯誤している最中です。
古着屋の閉店ラッシュが起きている3つの構造的な理由


下北沢の事例を一般化すると、いま首都圏で「閉店ラッシュ」が起きている背景には、主に3つの構造的な理由があります。どれも一過性ではなく、今後も続く傾向です。
- 都市部の家賃高騰と円安のダブルパンチ
- コロナ後の供給過多と希少性の低下
- SHEIN・ユニクロなど低価格勢との競合
それぞれ見ていきます。
都市部の家賃高騰と円安のダブルパンチ
下北沢・原宿・大阪アメ村などの激戦区では、コロナ禍で一時下がった商業地の家賃が、この数年で元に戻ってきました。低家賃の間に出店した小規模店ほど、家賃上昇のダメージを受けています。
| コスト要因 | 変化 | 影響 |
|---|---|---|
| 都市部の家賃 | コロナ後に上昇 | 固定費が重くなる |
| 為替(円安) | 対ドル140円〜150円台 | 海外仕入れコスト増 |
| 輸送費 | 燃料・人件費上昇 | 輸入経費が上乗せ |
さらに追い打ちをかけているのが円安です。海外仕入れがメインの古着屋にとって、ドル建てのコストは数年前と比べて明らかに重くなりました。家賃が上がり、仕入れが重くなる。この2つが同時に来て、体力のない店から閉店していくのは自然な流れです。
コロナ後の供給過多と希少性の低下
資金力のある企業の参入で、仕入れ競争が激しくなっています。古着は新品と違って量産できない「限りある資源」。良質なヴィンテージはどんどん取り合いになり、仕入れ値が上昇する一方で、商品としての希少性は薄まっていきます。
以前なら「ここでしか見つからない一着」だったものが、どこの店にも並ぶようになる。価格競争に巻き込まれ、差別化が難しくなる。これが供給過多の正体です。
SHEIN・ユニクロなど低価格勢との競合
「安くファッションを楽しみたい」というライトユーザーの受け皿として、古着は長く機能してきました。でも今、その層はSHEINやユニクロ、GUに奪われつつあります。
| 古着(レギュラー帯) | SHEIN・ユニクロ | |
|---|---|---|
| 価格 | 2,000円〜5,000円 | 1,000円〜3,000円 |
| サイズ展開 | 1点もので限定的 | 幅広く確実に揃う |
| 状態 | 使用感あり | 新品 |
| 選ぶ手間 | 大きい | ほぼゼロ |
ユニクロが2023年に始めた古着プロジェクトは、2025年11月時点でも試験展開の3店舗(世田谷千歳台店・前橋南インター店・天神店)に留まっています。大手でさえ本格展開には慎重な領域で、個店が「安さ」だけで戦うのはもう無理。古着が「安い選択肢」として持っていた強みは、この数年で完全に消えたと言っていいでしょう。
出典:落日のアパレル、倒産・閉店高止まり SHEINや古着の波|日経BizGate(2025年12月1日)
ブーム論争は本当に重要か?古着屋オーナーの視点


ここまで市場データや閉店ラッシュの話をしてきましたが、私は「ブーム論争そのものがあまり意味がない」と思っています。
- 「続く・終わる」の二元論が的外れな理由
- 流行で買った人はフェードアウトする
- 本当に好きな人はブームと無関係に買い続ける
それぞれ解説します。
「続く・終わる」の二元論が的外れな理由
ネット記事やSNSでは「古着ブームはまだ続く」「もう終わった」という二元論がよく語られています。でもこの議論、古着を本当に好きな人にとってはそれほど意味をなしません。
| 消費者の層 | ブームが続いたら | ブームが終わったら |
|---|---|---|
| 流行で買う人 | 買う | 離れる |
| 本当に好きな人 | 買う | 買う |
本当に好きな人はブームとは関係なく買い続けるし、ブームで買っていた人はブームが終われば離れていく。それだけの話です。
流行で買った人はフェードアウトする
「流行っているから」「周りが着ているから」という理由で古着にハマった人は、これから少しずつ離れていくでしょう。流行は次の流行に移るし、古着特有の面倒さ(サイズ感の難しさ、匂い、状態の見極め)を受け入れる理由がなくなるからです。
この層が減れば、全体の売上は落ちます。だから「ブームが終わる」と感じる業界人が増える。でもそれは、もともと「ブームの側」にいた店の話で、古着文化全体の話ではありません。
本当に好きな人はブームと無関係に買い続ける
一方で、生地や縫製、年代背景、リペアの跡まで含めて古着を楽しんでいる人は、ブームがあろうがなかろうが買い続けます。古着を「ファッション」ではなく「文化」として受け取っている層です。
私が一番大事にしたいのは、こういう人たちとの長い関係。新規のお客様を広く浅く追いかけるより、深く付き合ってくれる人と1年・5年・10年と関係を続けるほうが、店としても豊かだと思っている。



個人的には、ブームが続こうが終わろうが、どっちでもいいんですよね。大勝しようとは思っていなくて、「負けない戦い方」をしたい。本業の収入で固定費を極限まで削って、本当に古着が好きな人と長くお付き合いする。それが2026年の今、私が選んだ戦い方です。
第一次ブーム vs 第二次ブーム|違いは何か


90年代の第一次ブームと現在の第二次ブーム、同じ「古着ブーム」でも中身は大きく違います。主要な5つの軸で比較すると、現在のブームの特徴が見えてきます。
| 比較項目 | 第一次ブーム(90年代) | 第二次ブーム(現在) |
|---|---|---|
| 中心層 | マニア・愛好家 | 一般層・若年層 |
| 価格帯 | 高額ヴィンテージ中心 | レギュラー古着中心 |
| 購入チャネル | 実店舗のみ | 実店舗+メルカリ等 |
| 情報源 | 雑誌(Boonなど) | SNS(Instagram・TikTok) |
| 購入動機 | 憧れ・コレクション | 個性・環境・コスパ |
大きな違いは「裾野の広さ」です。第一次は一部のマニアが高額ヴィンテージを追い求める形でしたが、今は幅広い層がいろんな理由で古着を楽しんでいます。この裾野の広さこそ、ブームが単なる流行で終わらず「文化」として定着しているといえる。
「本当に古着を楽しむ人」の3つの特徴


ブーム論争はさておき、私が日々お客様を見ていて「この人は古着を本当に楽しんでいるな」と感じる人には共通点があります。
- 流行ではなく「自分の基準」で選ぶ
- 年代や生地の知識を自分で深めている
- 一着を長く着る。衝動買いしない
ブームが終わっても残り続ける層の特徴を3つ紹介します。これから古着と長く付き合いたい方の参考になれば幸いです。
流行ではなく「自分の基準」で選ぶ
本当に楽しんでいる人は、SNSで話題になっているから買う、という選び方をしません。自分が好きな年代・ブランド・シルエット・生地感を持っていて、それに合うものだけを選び取ります。
- 年代:60年代のワークウェアだけ集める
- シルエット:オーバーサイズではなくジャストサイズ派
- 素材:化繊は買わない、コットン100%だけ
- 状態:ボロは買わない派とボロこそ価値がある派
「オーバーサイズが流行っているから」ではなく「自分は80年代のショートシルエットが好きだから」。そういう軸を持っている人は、流行が変わっても離れません。
年代や生地の知識を自分で深めている
古着を本当に好きな人は、知識欲があります。タグを見て製造年を推測したり、縫製やステッチで年代を見分けたり、生地を触って質感を確かめたり。表面的なデザインだけで判断せず、一着の背景まで知ろうとします。
- ブランドタグの書体・素材から年代を推測する
- 縫製(チェーンステッチ・シングルステッチ)を確認する
- 生地の重み・打ち込み・手触りを確かめる
- ボタン・ジップなどの付属品の年代をチェック
- ユニオンチケットや製造国表記を読み解く
知識が深まると、同じ古着屋に行っても見える景色が変わります。「この服はなぜこの質感なのか」「なぜこの価格なのか」が理解できるようになり、買い物がもっと楽しくなる。この好循環に入った人は、ブームがなくなっても古着から離れません。
一着を長く着る。衝動買いしない
本当に楽しんでいる人は、買った一着を大切に着ます。リペアしたり、自分で手入れしたり、何年もかけて自分の服に育てていく。「安いから買う」「タンスに眠らせる」という買い方はしない。
| 長く楽しむ人 | 衝動買いする人 | |
|---|---|---|
| 1年で買う着数 | 3〜10着 | 30着以上 |
| 選び方 | 納得するまで待つ | その場の気分で決める |
| 購入後の手入れ | 洗濯・リペア・補修 | ほぼしない |
| 5年後 | 愛着が育つ | 大半をフリマで売却 |
一着と長く向き合う人は、次の一着を買うときも慎重になります。本当に欲しいものが来るまで待てる。この「出会いを待てる姿勢」こそ、古着を長く楽しむコツだと私は思っています。



LOGUEを完全予約制にしたのは、こういうお客様との時間を大切にしたいから。売り込むためじゃなく、1人1人と話をして、その人の「自分の基準」に合う一着を一緒に探したい。華やかさはいらないんです。自分のこれまでの経験を形にしただけ。それだけです。
まとめ|ブームは終わらない。ただし付き合い方は変わる
古着ブームは終わっていません。2025年の市場規模は約6,230億円まで拡大し、文化として定着しつつあります。
同時に、下北沢では200店舗超に膨張した古着屋が調整局面に入り、閉店ラッシュも起きています。家賃高騰・円安・供給過多・低価格勢との競合という構造的な変化が背景にあり、2026年以降もこの流れは続くでしょう。でもこれは「ブームの終わり」ではなく、「ブームの形が変わった」ということです。
重要なのは、あなた自身が古着に何を求めるかです。流行に乗って買うのか、自分の基準で選ぶのか。一着を長く着るのか、次々と買い替えるのか。その選び方で、古着との付き合い方はまったく変わる。
ブームがどう変わっても、本当に古着を好きな人が離れることはありません。私はそういう人と長く付き合える店でありたいと思っています。


